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2011年5月16日 (月)

0001 エンジニアの野外手帳

近所の書店の何軒かで

「エンジニアの野外手帳」

というタイトルが目にとまるようになりました。

自分もエンジニアの端くれだと思っているので、
なんとなく気になってはいたのものの、
今日、近づいてみて、まじまじと眺めてみると
小さな文字で ドーコン叢書① と表紙にあるではありませんか。

ドーコンというのは北海道にある会社の名前で、
私自身、社会人としての第一歩をドーコンさまと同じ業界に踏み出し、
長い間育てていただいたばかりでなく、
学校時代、同じ研究室で学んだ友人も勤めているという、
そういう会社なのです。

そこで、このブログの記念すべき第1冊目は、この本にしようと決めました。

序文の書き出しには、

私たちは札幌に本社のある総合建設コンサルタントのエンジニアである。
道路、橋梁、河川、環境、農業、地質、ランドスケープ、都市などの
工学技術分野を専門とし、
道路や河川をはじめとする社会資本の調査・計画・設計業務に携わっている。
そんなカタイ私たちが見つけた「北海道のちょっといい話」を紹介したい。
(P.17)

とあって、ああ、オレって「カタイ私たち」の一員だったんだ…
(今は観光業界なのに)
と、小さく納得するのでした。

ぱらぱらとページをめくると、有名なのでこちらは知っているけれども
多分先方は私のことなどご存じないだろう… と思う方や
しばしば参考資料として役所などから供される報告書でお名前を拝見する方
以前、仕事を引き継がせていただいたときに、
(他社に仕事を途中から持って行かれるのは心外だったはずなのですが)
快くしかもていねいに内容を教えてくださった方など、
私のほうが一方的に親しみを覚えるお名前がいくつかあって、思わず購入。

「川を覗いて魚と話しをしてみなければ、魚のことはわからない」
先輩技術者の言葉に突き動かされて…
(P.24)

とくれば、先輩技術者とはあの方のことだろう… と。

巻頭のグラビアには、北海道の大地を体感しながら、
自分も味わってきた、まさに“千載一遇”の感動が、
多くの人の共感を得られるだろう美しさで要領よくとりまとめられ、
さすがドーコンさん…

読み進めていくと、

絶滅が危惧されている動植物を記録したレッドデータブックの整備が進むと共に、
そこに登場する野生動植物の保全を第一の目標にするようになった。
同時に、貴重種に該当しないノネズミの調査が簡素化されるようになった

と指摘するくだりがあり、

ノネズミの日常生活が当たり前に営まれていることは、
その場所の健全さの証ではないか。
(P.69)

と、警鐘を奏でながら続く文章からは、現場の担当者の本心が浮き彫りに。

道路に関わるところでは、
北海道では進行方向の先に山が見える直線道路が多いことが指摘されます。
(Ⅱ-1)

日頃から、うすうす北海道の道路は景色がいい…
と、思ってはいたものの、この背景に「山アテ」と呼ばれる手法があり、
開拓当時、三角点が設けられる山頂は測量の目標として非常に便利だった
という事情が隠されていたとは、自分の不勉強を恥じ入るばかり。

治水百年。のタイトルが付された章(Ⅱ-3)では、
石狩川の治水が実に壮大な事業であったことを指摘して、
「現象の本質に迫る」「未来を見すえる」
岡崎文吉博士(北海道庁技師)をはじめとする先人の知恵や努力は
時代を超えて現代に通じていると述べられ、

真駒内から中山峠に抜ける定山渓国道については、
(つい先日、モニターツアーの機会に初めて通過し、
 その大胆なつくりに目を見張ったものでしたが)
改良当時、道路改良事業所長の指揮により開発局の技術職員が直接設計を担当し、
「道路は公園のようでなければならない」とのポリシーのもと
本邦初の造形を含む道路を入念に試行錯誤して造られたことが紹介されます。

「未来の風景をつくる」とする章では、
都市コンサルタントが持つべき重要な能力のひとつとして
「アウフヘーベン(止揚)」が紹介されています。

アウフヘーベンとは、矛盾や対立するように見える意見であっても、
別な目線で捉え直すことで。双方の考えをより高い次元で結びつける考え方だ。
(p.194)

と説明されていて、熱心な住民の多い土地でときどき見かける
熱心さのちょっとしたボタンの掛け違いから相互に理解できなくなってしまう、
そういう場面を思い出させられます。

ひょっとしたら、今の自分はコンサルタントという顔ではないけれども、
まさにアウフヘーベンを実践する現場にいるのかもしれません。

そして、これまでのまちづくりの取り組みをかえりみて

今、まちづくりの夢を語るコミュニケーション技術だけでは限界を迎えようとしていると感じる。
(p.201)

と。
これは、非常に強く共感する一行でした。

住民を巻き込みさまざまな組織がつくられたが総じていえば、
みんなにとって良いことや楽しいことをいかにして実現していくか、
住民の思いをいかにして引き出すかという、夢のある取組だった。
30年後には人口が半減するまちが出てくる。
そんな厳しい時代に入った今、夢だけではまちづくりを語れなくなっていく。
(p.202)

生意気に思われてしまいそうですが、
私が「まちづくり推進室」というコンサルタント会社の一部門で
リーダーの立場をいただいていた頃、
まさにこのことが喫緊の課題だと感じていたのです。

北海道では、「賑わいづくり」に代表されるいわゆるまちづくりの取り組みでは、
お金を消費しても生み出す力は弱い。

イベント好きの行動力に頼りすぎてしまう結果、活動は次第に疲弊していく。

そしてなにより、“まちづくり”では、食っていけない場合が多いのです。
筆者はそのことを思い描きながら書いているのかどうか

肉を切らせて骨を断つといった“まちたたみ”がテーマになってくる時代には、
これまでと次元の異なるコミュニケーション技術の上乗せが必要となるに違いない。
(p.202)

と、指摘します。
私が直感的に思うのは、「コミュニケーション技術の上乗せ」にあたる部分は、
会計とマーケティングかもしれないということです。

建設コンサルタントに身を置いてきた私には、
会計やマーケティングの知識と技術が著しく欠如していると感じています。

しかし、この部分…
つまり市場に受け入れられて経済的に自立していく裏付けがなければ、
社会資本の整備も効果的には行われないのです。

他方、“賑わいづくり”というか“イベント”というか“お祭り騒ぎというのか”
そういう、一時は楽しい“まちづくり”については、
コミュニティの維持、いわばご近所のつながりに少なからぬ力を発揮するという、
必ずしも経済効果だけでは測定できない力があることも事実です。

であれば、軽々に取り組む前に熟慮も必要かもしれません。
うまくいかないで、場合によってはけんか別れのようなことになってしまっては、
コミュニティに非常に深い傷を残すことになるかもしれなからです。

失敗してしまうこと… それは地域の経験として尊いものとなっていくでしょうけれども、
取り組む以上は、そういう見識を持つメンバーも内包にされていることが重要に思えます。

自分より地域を優先する、みんなの利益の実現のために行動するといった、
住民意識を高い次元に持ち上げていくことが求められてきているからだ。
だが、その実例は全国を探してもいまだに現れていない。
(p.202)

そういう模索の中に、自分も身を置いているのであれば、光栄なのですが…

最後の章は、札幌のサイクルシェアリング「ポロクル」の取り組み。

シェアリング拠点は多いほど利便性が増すわけですが、
そのそれぞれに管理者を置いていてはコストがかかってしまうため、
携帯電話回線とICカードやおサイフケータイも活用したクレジット決済で
問題解決を図ったことが冒頭述べられて、またぐっと引き込まれてしまいます。

平成21年の最初の実証実験のオープニングに合わせた
「北海道モビリティカフェ」では、東京大学大学院の羽藤英二准教授が
次のように語ったと記されています。

「21世紀へと時代が進むにつれて、移動風景が壊れてしまった
(中略)
 でも、かつては移動すること自体が楽しみだった時代もあったのです
(後略)」

それはまさに、我々、観光の分野も思い出さなければいけないことではないでしょうか。

社会的企業(Social Enterprise)という概念があって、
我々も、そうした企業になりたいという志を少なからず持っています。
持続可能な利益を得ながら社会にとって重要な事業を担っていく存在。
筆者は、次のように指摘します。

行政のエージェントとして、
これまで表に出ることの少なかった私たちコンサルト会社の内部には、
今の時代に求められる知恵や技術が蓄積されているはずだ。
(p.232)

そして、最後にドーコン代表取締役様の言葉が紹介されます。

100年企業を目指して、質の高い品格と文化の香りがする社会資本を
未来の世代に残せるような仕事をしよう!
(p.232)

北海道のリーディングカンパニーのトップが、このように発言していることが
こうした書籍を通じて公表されることは、
北海道中の同業者を励ますことになるのではないかと感じます。

あとがきには、こうあります。

この叢書の発行は、エンジニア特有の技術的バックボーンが確認でき、
勉強するきっかけになり、
私たちの仕事の魅力を知ることができるというメリットがあるのだ。
(p.236)

このことは、読み手となったエンジニアにも少なからず
同様のメリットをもたらしているようです。

一番トクをしたのは私たち自身かもしれない
(p.236)

まったく同感です。






-----では、私の反応したくだりリストを以下に-----

50年、100年という長いスパンで未来の社会に必要なものをしっかり見定め、
良質な社会資本を次の世代に残す責務があると思う。
(p.18)

雪むしは、北海道ではアブラムシの仲間の「トドノネオオワタムシ」を
指してよぶことが多い。
(p.46)

さて、インタープリターの仕事は、環境コンサルタントの仕事に通じるものがある。
(中略)事業が行われる地域の自然を調べ、事業が自然に与える影響を予測し、
その影響を最小限にする措置を考えること。
自然と人間、歴史や文化と現代人の間に立ち、
「環境の中での人間の位置を説明する技術」が求められるのだ。
(p.55)

野ねずみが代をつないで生息していくためには、
直径30~40mの行動圏だけでは足りず、
その周囲に分散や侵入の場となる「面」の広がりが必要なのだ。
住宅地、学校、商業施設などが軒を連ねる市街地に
野生生物の少ないことを常識としていっていても、
「なぜ動物がいないのか」と深く考えることはない。
(p.68)

私たちコンサルタントエンジニアは、良質な社会資本の整備、
そして自然環境の保全という付加価値のある整備のために、環境調査を行っている。
(p.69)

北海道の土は全国の土と比べ“若い”。
噴火から年月の経っていない火山性土が北海道には非常に多い。
また、ほとんど北海道にしかない泥炭土も土としてみると若い。
この若さが、日本の食料生産を支える
北海道農業の活力になっているのかというと、実はそうではない。
(p.104)

色温度は紫のほうが高く、赤が最も低い数値となる。
(中略)
正午の北天光の測定値をもとにモデル化した数値によると、
北緯43度、札幌あたりの色温度は6800k(ケルビン)。
一方、北緯26度、那覇あたりの色温度は4200kで
白色・温白色の蛍光灯に近い色となっている。
北海道では紫~青の色が、沖縄では黄~赤の色がくっきりと見える傾向がある。
(中略)
北国では寒色系を好み、南国では暖色系を好むという違いがあるようだ。
(p.169)

提案した色彩が市街地景観の適度な統一に効果を発揮
(p.180)

まちづくりは、「計画」と「実践」の両輪で動くもの
(p.189)

住民の方々の発する言葉の背景、生活体験を丁寧に紡ぎ、
計画の幹を見つけ構築していく。
計画書は決して言葉の寄せ集めではない。
計画書案を読んでいただいたときに
「私たちの言いたかったことは、まさにこういうことだったんです」と
いわれかどうかがコンサルタントの試金石なのだ。
(p.193)

都市コンサルタントが持つべき重要な能力のひとつとして
「アウフヘーベン(止揚)」する力がある。
アウフヘーベンとは、矛盾や対立するように見える意見であっても、
別な目線で捉え直すことで。双方の考えをより高い次元で結びつける考え方だ。
(p.194)

サイクルシェアリングを支える地域連携のモデルをつくることも
実験の目的に加わった。国道36号へのポート設置に
「札幌大通まちづくり株式会社」が主体的に取り組んでくれたことが
その代表例である。同社は大通地区のまちづくりの総合調整役として
平成21年に誕生した。

…どんな会社なんだ?…

まちなかの公共空間にポートの設置を認めてもらおうとするならば、
まちづくり会社としての私たちが主体になるほうが
合意を得られやすいと考えたのです。

…なんで合意を得られやすいの?…
(p.224)

…札幌大通りまちづくり株式会社の服部取締役統括部長は、
こう語って関係機関や地域との調整に尽力されたとあります…

全く新しい社会実験なので、いろいろな問題がありましたが、
議論を重ね、納得を積み重ねていくうちに、
関わる人たちがそれぞれに自転車をシェア(共有)するという考え方に
可能性を見出していったと思います。研究会ベースの「ポロクル2009」と違って、
規模を拡大した「ポロクル2010」はいろいろな人たちの協力がなければできなかった。
想いと責任をそれぞれが共有しながら、進めていったのです。
このつながりと広がりこそが「ポロクル2010」の最大の成果だったのではないでしょうか。
(p.224)

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